2019年10月22日

どうしようもないほど暇な時に読むブログ記事【雨降る朝、ボトルコーヒーとシソ昆布おにぎり。そしてキビナゴ。646円。】

朝、目覚めると、夜だった。



「またかよ」


釣りに行くと決まった日はいつもこうだ。それよりもさらに僕を悩ましているのは、いちど目が覚めると寝つけなくなってしまう。こうなってしまったのはいつからだろう。


35を境に、歳を重ねる毎に体力は衰え頭は無駄に冴える。肩より上の毛は力なく艶も消え色も消える。そこより下の毛は人生の半分を取り返すがごとく謳歌し放題。ほんと、わがままだ。




ほとんど無意識のままに枕元のスマホに手をのばす。




--3時12分--



「やっぱりまだ夜じゃないか」





ドボドボ叩く滝のような水の音、時おり通る車が鳴らしていく濡れたアスファルトの音、冷たい風。


開けっ放しの窓から遠慮なく入ってくるそれらがまどろむ僕を──ちょっとまってくれ、僕は今アカジンを───現実世界へと引きもどす。


スマホに手をかざすと時刻は4時を少し過ぎた頃。



開いた天気予報アプリ──これもまた無意識に───は傘のシンボルを表示していた。


「天気予報は晴れのはずじゃ!?」



続けてひらいた雨雲レーダーは無情にも赤く染まっていた。


どうしようもないほど暇な時に読むブログ記事【雨降る朝、ボトルコーヒーとシソ昆布おにぎり。そしてキビナゴ。646円。】



昨夜からそんな予感はしていたのだけど、現実は常に非情で残酷だ。




──さあ、時刻はまだ4時過ぎ。

夜明けまで2時間もある。僕達の今日は今、はじまったばかりじゃないか。諦めるにはまだはやいと思わないかい?──



あぁ、聞こえてきた。いっつもこうだ。

行く道を塞がれてしまったような時や、何か特別な判断に迷った時、でもそのほとんどはクソどうでもいいような悩み、例えば、そう、朝食はベーコンエッグにパンを食べようかそれともご飯に納豆?冷蔵庫にはキムチも多少残ってたよな?昨夜のから揚げは息子に取られちゃった。それなら納豆キムチなんて健康的な感じだし、賞味期限的にも──3日過ぎて──ちょうど良いんじゃないか?

そんなどうでもいいような事柄にも。いつだってこいつは現れる。


わかってるさ。何の話をしてるのかって思ってるんだろ?

大丈夫。僕も今、君と同じこと思ったし同じこと考えてるから。「コイツやべぇ奴や」ってね。




とにかく僕は活動をすることに決めたんだ。釣りへ行く為の準備は昨夜に済ませてある。

起きあがってやることと言えば、トイレへ行くこと。顔を洗うこと。着替えること。あとはそうだな、渇いた口内へコップ一杯の水を流し込むこと。それだけさ。たったそれだけ。



全ての身支度は完璧に済まされた。──筈だった──ただ一点を除いては。


寒い。予想に反して寒いのだ。

僕が目覚める寸前まで降っていたであろう雨が日中の熱を丸ごと流してしまったようだ。海辺は丘よりさらに気温が下がる。このままでは激しく吹く海風が僅かに残した体温をすべて奪い去ってしまうだろう。

タンクトップの上に薄手のジャージ。これではあまりにも寒すぎる。無謀だ。



──まあいいからさ、とりあえず落ち着こうよ──



突如あらわれた緊急事態にも僕の中の彼は冷静だった。


先ほど一気に飲み干したばかりの空のコップにもう一度おなじ量、いや、気持ちの分多めの水を、潤いを完全に取り戻した口内へとたっぷり流し込む。一気に飲みほすつもりだったコップの水は半分ほど残してしまった。


この一見すると意味を持た無いであろう行動は不思議と、混乱と不安で絡まった思考を綺麗にほどいてみせた。


──ほら、ああするといいよ──

「そうか、なるほど」僕は頷く。


深刻なようで単純なこの問題はTシャツを一枚多めに羽織ることですぐさま解決した。




すべての荷物を軽トラの荷台に載せいつもの場所─と、言いたいとこだけど、今日は24時間いつでも開いてる地元のあのスーパー。

【U】からはじまって【N】でおわる、お馴染みの【UZBEKISTAN】へ。


時刻は5時を過ぎ。朝だといっても夜明ける様子はない。


日中はまだ暑く、陽射しも強烈。それでも10月半ばの今この時──夜と朝の間──はもう夏の名残さえも感じさせてくれない。



外灯の明かりが良く当たる駐車スペースへ軽トラをつける。


店内へ入り一目散で向かうその先には冷凍保存された秋刀魚や鮭、鯖などがところ狭しと陳列されていて、同じくその場所にお目当てのモノはある。

県内男性、いや、──このご時世にセクシャルで区分するつもりはないのだが、勘違いされたくないのでここは【県内の釣り好き】と改めよう──県内の釣り好きは、【きびなご】と印字されたそれを食材と言うよりもどこかもっと粗野で粗暴にそう、平たく言えば【餌】として認識してるしそのように扱う。


僕は箱売りのそれを手に取り、続けざまにボトルコーヒー、シソ昆布おにぎりを流れるようにレジへと運ぶ。それはまるで物流センターで活躍するAIロボットのような動きだろう。



買い物を済ませ軽トラに戻り、運転席の前で直立のままボトルコーヒーの蓋をひねり開け、軽くひと口、次はシソ昆布おにぎりを一口、二口、三口、4口目で完食。そしてボトルコーヒーをもうひと口。それでキャップをキツく閉じ荷台にあるクーラーボックスへと仕舞う。ボトルコーヒーと入れ替えに昨夜こしらえた仕掛けを取り出す。それを釣竿のメインラインへと繋ぐ。

外灯がいちばん良く当たる場所でのそれは、神聖な儀式を想像させるのに容易い。



時計はもうすぐ6時を示す頃だというのに雨は相変わらずアスファルトを濡らす。

フロントガラスに打ち付ける雨は勢いを増し、ワイパーはとめどなく溢れる雨のすべてを拭えないでいる。それはまるで僕の心を現しているかのよう。


現場へ着く頃には「それが当然だ」と言わんばかりに降り続ける。──まるで、世界の終わりのようだね──「うん。僕もそうみえるよ」もう、ふたりしてネガティブだ。


か細い期待で雨雲レーダーを開いてはみたが直ぐに閉じた。

どうしようもないほど暇な時に読むブログ記事【雨降る朝、ボトルコーヒーとシソ昆布おにぎり。そしてキビナゴ。646円。】



ゆっくり息を吐き、ゆっくり息を吸う。


軽トラから飛びだした僕に迷いは無かった。


荷台の道具すべてを担ぎ、足早に誰もいないビーチ沿いを突き進む。


勝ち目の無い戦い、それでも課せられた使命を果す──時代錯誤かもしれないけど、僕はそんな生き方に少し憧れを抱く──そんな戦士をイメージしながらポイントへ向かう。結果がどうであろうとそれはもう決められたことなんだ。




あれからどれだけの時間が過ぎたのだろう。


身体は勝手に震え、意識をせずとも竿の先はトゥイッチをしている。熱はすべて奪われ僅かも残って無いようだ。


海の向こうからは獣のような唸るような音が聴こえる。


スマホの時計は7時過ぎ──嘘だろ?──1時間も経ってない。



獣のような唸る音が雷鳴だと気づく頃には、見えるモノ、きこえるモノすべてが絶望だった。




──もう、おやすみ──


胸の奥で確かにきこえた──ポキッ──








冷えた身体にコーヒーの香りが熱をもたらす。

僕は今、すっかり熱を取り戻しこの記事を書き進めている。

書き進めながらふと気づいのだが、暑い。脇下からじとっと汗ばむ程度に暑い。そして少し、ほんの少し怠い。

この感じは何度か身に覚えがある。

多分だが、いや、限りなく確証に近い表現をするならばこれはきっと【風邪】なのかもしれない。

しかし、【風邪】と確定するのは簡単だが【風邪】と認めてしまうのはそう簡単には行かない。

それは【病は気から】とか、【気合だ気合だ気合だ】とか、【指導!指導!指導!】とか、【おちこんだりもしたけれど、私は元気です。】とか、そんな類いの、ごくごく個人的な心情の問題なのだ。


そういうことで。以上。







追伸


ヒャッハー!

どうしようもないほど暇な時に読むブログ記事【雨降る朝、ボトルコーヒーとシソ昆布おにぎり。そしてキビナゴ。646円。】

酒、うっまー!!!

(風邪っぽくなったりもしたけど、私は元気です。)


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シオヤキスト(2019-10-09 19:40)


この記事へのコメント
エッセイスト?

コラムニスト?

セラピスト?

長編ノンフィクションスペクタクルエッセイwww

朝からごちそうさまでした♪
Posted by でーじ!でーじ! at 2019年10月23日 07:12
チョッパーさん、
朝の忙しい時に読んじゃダメですよw
Posted by エスパーエスパー at 2019年10月23日 10:07
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